#32 ミックスダブルス 殺し屋VSボディーガード:Mixed Doubles
あらすじ ロンドンの安宿でタンスに押し込まれたメイドの死体が発見された。
駆けつけたコーレイは、宿の主にその部屋の客の事をたずねる。主はコーレイが持っていた写真の中からその客を選び出した。それは、近日中に訪英する某国VIP警護の為、コーレイが警戒していた殺し屋の一人で、超一流のプロ、リオだった。
その頃、ドイルとボーディは、特別任務の為ハードな特訓を受けていた。教官ブライアンは骨折はしない程度に、二人にナイフや素手での格闘に勝つ方法を叩き込んでいた。だが、その時点ではブライアンはもちろん、二人にも特訓の目的も任務の内容も知らされてはいなかった。
一方、変装用の髭を剃っていたところを見られた為、メイドを殺し逃走したリオは、暗殺実行の為別の殺し屋フランクを雇う。さらにフランクはもう一人、自分の相棒ジョーを呼び寄せた。
彼らのターゲットのVIPとは条約調印の為訪英する事になっていたバリサイ大統領。しかし、情報漏れを防ぐ為、その事を知っているのは大統領側イギリス側含めてごく少数の人間だけの筈であった。
だが、その情報を知る一人、大統領秘書官のアクメドが密かにリオと通じていた。ボーディやドイルさえ知らされていない極秘の筈の情報はアクメドを通じてリオにすべて漏れていたのである。
アクメドの情報では調印会場は2箇所用意されていた。第1会場は堅固な要塞のごとき建物で、暗殺者の入る余地はない。だが万が一の為用意された第2会場は、比較的侵入しやすい。その為、リオは場所を第2会場に決め、二人の殺し屋に暗殺から逃亡までの手順を叩き込むのだった。
それを阻止する為のボディガード、ドイルとボーディが部長からその特別任務の内容を知らされたのは、ようやく特訓を終えた時だった。要人警護という明確な目的を与えられた二人はその為の訓練にとりかかる。
そんなある日、いつものように訓練をしていた殺し屋達のところへ、リオに呼び出されたアクメドがやってきた。リオはそのアクメドをいきなり殴り倒し、縛り上げてしまった。
呆然とそれを見ていたフランクとジョーだったが、リオに追い払われてしまう。
追い払われた彼らはパブへやってきた。久々に酒を飲みくつろぐ二人。その時表に車が止まり、ドイルとボーディが降りて来た。お互いそうとは知らない殺し屋とボディガードは偶然にも同じパブで酒を飲む事になったのだ。
それでも、壁で仕切られた部屋で直接顔を合わすことはなかった筈だった。が、割れたグラスを拾う為しゃがみ込んだ女性店主の胸元をボーディが思わず覗き込んだ時、同じく覗き込んでいたフランクと目が合ってしまった。笑顔で挨拶を交わす二人。
さらにその時、パブを追い出され、表で暴れ始めたがチンピラ達がボーディの車を壊し始めた。飛び出すボーディとドイル。そこらのチンピラなど二人にとっては物の数ではないが、一人が素手のボーディにナイフを向けて来た。それを見ていたフランクは、ジョーの制止も振り払い、飛び出してボーディに加勢してしまった。
出会うはずのない場所で交差してしまった二組の男達。だが、それも一瞬の事。つかの間の休息の後、彼らはそれぞれの場所へと戻って行った。
戻ったボーディ達はコーレイに連れられて、会場の下見へと向かった。第1会場の後、第2会場も下見したコーレイにボーディは「ここは予備の会場では」と文句をつけるが、「いつここが本会場になるかわからん」とコーレイは突っぱねた。
だが、そのコーレイの言葉は現実となった。アクメドが無残な死体で見つかったのだ。アクメドは第1会場までしか知らない筈だった。傷だらけのアクメドの死体から、第1会場が漏れたと察したコーレイは直ちに第2会場へと変更を指示。が、時すでに遅かったのである。
アクメドの死体を捨てた後、リオは、フランク達をまだ警備が手薄な第2会場へ忍び込ませていたのだ。二人の殺し屋が屋根裏に潜んでいる事も知らず、第2会場の準備は慌しく進められていったのである。
その準備も終わった調印前夜、ボーディとドイルは警戒の為、調印会場に泊り込んでいた。寝付けない二人が話しこんでいた頃、屋根裏の二人も寝付けないまま、話しこんでいた。
そして、夜が明けた。やがて来るその時に向け、二組の男達はそれぞれに己の命を預ける銃の点検に余念がなかった。
高まる緊張の中、バリサイが到着した。調印式が始まり、静まり返る会場。バリサイの護衛をドイルに任せ、ボーディが会場の見回りの為部屋を出た。
その頃、下が静まったのを見計らい、フランク達が屋根裏から降りてきていた。ボディガード達がお互いの顔を知り尽くしている筈はないと、堂々と階段を下りて来たフランク。ところが、丁度その時階段の下には、見回っていたボーディがいたのだ。
人のいない筈の階上から降りてくる男を不審そうに見上げた向けたボーディ、そのボーディの目とフランクの目が合った。一瞬そこに見知った顔を見つけ微笑む二人。だが、次の瞬間、それがここにいる筈のない顔だと先に気付いたのはボーディだった。フランクが気付くより一瞬早く、ボーディの銃が火を吹いていた。
それを合図にジョーが階段の踊り場からバリサイめがけて銃を撃つ。だが、ドイルが大きな机を倒し盾にしてそれを防いだ。側近の一人が犠牲になったが、バリサイを撃てないまま、ジョーは逃亡を図る。その際、足を痛めたジョーは、その足を引きずりながら、リオが待つ場所へ必死に向かうが、ほんの数秒遅れた為、リオは彼らを置き去りに車を出す。目の前で見捨てられたジョーは、リオの乗った車を撃った。弾は命中し、車は立ち木に激突。だが、そのジョーも、追ってきたドイルに撃ち倒されてしまった。
暗殺を阻止し、暗殺者は倒した。が…。後味の悪さをぬぐえない、ボーディとドイルだった。
解  説 ボディガードと殺し屋、二組の危険な男達の様子を交互に映しつつ、スピーディに展開していくストーリー。女性がほとんど登場しない事もあって、超硬派な話になっている。
みどころ 殺し屋側が第2会場を舞台に特訓を始めた時、どうやって会場を変更させるつもりか不思議でしたが、まさかアクメドを惨殺して会場変更を計るとは。殺し屋が相手側の情報提供者を始末するのは当然としてもその死体まで利用するところがすごかった…。
ところで、ボーディとフランクが出会うところ、最後の対決の伏線になる重要なシーンの筈なのに、軽い…、軽すぎる…。スケベ同士気が合ったというべきか…。殺し屋とボディガードとしてでなく、仲間として出会ってたら…。案外、ドイルよりいいコンビになってたりして。そうなると、相当のーてんきなコンビになりそうだな。
前夜、会場に泊り込んだ彼らの会話もよかったし。あの時、身の上話をしてたのはドイルとジョーでしたっけ。ボーディとフランクは相棒の話をじっと聞いてましたね。同じような内容で話し込んでいたにもかかわらず、なぜか明るい、ボディーガード側。この二人にとことん深刻になれって言っても無理か…。
などと頭を抱えていたら、調印式直前はやっぱりナーバス。ドイルに「怖いのか?」と聞かれ、「怖いさ、いつだってな」と、本音をもらしてしまったボーディはいつになく真剣だった…。
結局、殺し屋VSボディガードの決着をつけたのは、ボーディとフランクだったわけで。フランクを撃つ時のボーディの少し悲しげな目とか、ジョーを撃ってしまった後のドイルのやりきれない様子とか、ボーディーガード側が勝ったのに、素直に喜べない後味の悪さが残ってしまった。
結構重いストーリーにもかかわらず、やっぱ、ボーディはのーてんきで、「電車を間違えて乗るなよ、でなきゃ一緒になれねぇからな」の名台詞を言ったのは、調印前夜の事でした…。
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